私の名前こそ「まなぶ」ではありますが、決してその学びの道は順調でも平坦でもありませんでした。学びの中心的な存在である学校に関しても、不登校の時期があったり、退学を考えたり、入り直したり。自分の甘えとこだわりが入り混じった紆余曲折の過去でした。それは、決して私だけではないと思います。妻も同様で、親の仕事の都合で転校を繰り返したのちに通っていた中学校では、強い管理姿勢に耐えられず不登校に。その後進学した高校も似たような理由で中退しています。
いじめがあったり、先生とうまくいかなかったり、学びたいことが違ったり、学びたい時期が遅れてやってきたり。人生にとって学ぶことの重要さに議論の余地はありません。だからこそ、その学びに関して、人それぞれの興味と関心にあった多様な選択肢を用意すること、そして大人になってからも、例え一度「学校」というレールから外れても、学びたいと思ったタイミングで学び始めることができる社会を作りたいと思っています。そのために、文科省に働きかけ、超党派で議連を運営し、法律を作り、民間で取り組む同志の方々を応援しています。
学校も大事。そして学校以外の学びの場も、同じくらい大事。学校に馴染めない、通わない子どもたちに居場所と、学校とは違った学びの場を提供したい。子どもの想いをできるだけ尊重するために、学びの選択肢を出来るだけ多様にしたいと、長年フリースクール等の支援に取り組んできました。
今でこそフリースクールは学びの一つとして市民権を得つつありますが、ひと昔前のフリースクールは、「不登校児が集まる場所」。私が取り組みを始めた20年ほど前は、支援を求めようにも、「学校ではないので所管する部署がありません」と、文科省は取り合ってもくれませんでした。それでも、粘り強く交渉することで、ようやく生涯学習の一部として生涯学習局が所管することになり、多くの関係者や与野党議員が団結して「子どもに対する教育の場である」と強く訴え続けたことで、今は学校教育と同じ初等中等局が所管しています。
フリースクールに通う子ども達も通学のための学割定期を支給するという提案から始まり、フリースクールもホームスクーリングも、学校と同じ学ぶ場なのだとうたう「教育機会確保法」を議員立法で成立させるまで理解の輪は広がってきました。
長年のこうした働きかけによって、文科省も、子どもたちの自立が最終目標であり、学校に戻すことだけがゴールではないとの認識を示すところまできています。
それでもまだ、不登校児には「学校に(だけ)通うことが子どもの使命」「不登校は不健全」「学校に復帰するのがゴール」と学校側、地域の目、親の気持ちが向けられているのも事実です。 その中で苦しみ、自分を失いつつある子ども達に対して、もっと多様な学びの場を提供したいと思っています。
しかし、議員立法を成立させたフリースクール支援議員連盟も、中核的な役割を担っていた方々が永田町を去られて一年以上休眠状態に。事務局長として残っていた私は、この灯火を消してはならないと議連の再構築に取り組みました。
子どもの数だけ、学びの選択肢はあっていい。
学校だけが、学びの場所ではないのだから。
そんな想いで、多忙な国会活動の中ではありましたが、引退された議員を訪ねて了解を取り付け、各党の再びこの課題に取り組む議員と話し合いを。役員の推挙を頂くなど様々な調整を経て、2022年11月、新たに議連会長に自民党の丹羽秀樹先生、幹事長に公明党の浮島智子先生にご就任いただき、議連の名称をより目指す社会に近づけた「多様な学びを創る議員連盟」と改称して再出発を果たすことができました。
議員連盟には新たに多くの議員や関係者の方のご参加も募り、積極的な議論を続けています。不登校の子どもたちの増加に伴って、不登校の課題を深く理解する議員も増え、今年8月には、自治体議員らによる「学びの多様化地方議員連盟」も誕生しました。
文科省の調査によると、小中学校における不登校児童生徒数は30万人近く。秋田県内にも、過去最高となる約1500名の不登校の小中学生がいるとされています。
その中には、学校に通いたいけど通えない子はもちろん、学校は嫌だけれども勉強はしたい・友達とは遊びたいという子、あるいは積極的に違う学び方に取り組んでいる子など、内実は様々です。
すべての学校が、一人ひとりの子どものありのままを受け止める場に変わっていくことはもちろん必要ですが、どんなに素晴らしい学校が出来たところで、やはりそこが合わない子も必ず現れます。
誰もが自分にあった学びの場を見つけることができる。
そんな社会を目指し、学校が全てという画一的な学びのあり方を変えていく必要性は高く、これまでのあり方を自ら改めていくことが難しい行政に対して、政治が担う役割は大きいものと自覚しています。
文科省の皆さんや、日々子どもたちに向き合っている民間団体の皆さんなど、多くの方々の力と知見を借りながら、一人でも多くの子ども達が自分にあった学び方で人生を築いていけるよう引き続き努力を続けていきたいと思います。
写真は個人演説会に来てくれた子どもたち