202405月14日

【共生社会に向けて】

現在、私の所属する法務委員会では、技能実習制度を見直す入管法改正の議論が続いています。

日本に暮らす外国の方が増え、高齢化・人口減少社会を迎えている日本が今後も活力ある国であり続けるためには、外国の方との共生社会のあり方が問われる時代になっています。

そうした折、外国人の受入れ・共生をみんなで考える情報誌である「国際人流」の復刊にあたって、自民党の古川元法務大臣と共に寄稿を依頼されました。限られた文量ではありましたが、今後の共生社会の実現に向けた考え方をつづりました。

以下に寄稿文を掲載いたしますので、ご笑覧いただければ幸いです。

 

「国際人流」復刊に寄せて

日本は世界に先駆けて高齢化、人口減少社会を迎えました。その日本が活力ある国であり続けるためには、やはり外国人の方と共生していくことが最重要の課題であると考えています。だからこそ「多文化共生の実現を!」と意気込むわけですが、それはそれで大きな国民の意識変革が必要になるでしょう。常々多様性は素晴らしいと謳う妻ですらも、その先進地ヨーロッパを訪問した際に英語が通じず、ゴミと騒音に疲れ、共生の難しさを体感したようで、妻より保守的な人が多いであろう日本はここからどうやって多様性を受け入れていくのだろうと悩んだところでした。

そのような悩みを20年以上フランスで生活する友人に打ち明けたところ、大事な示唆を頂きました。
「多様性は疲れるのですよね、本当に。しかもその多様性が能力やイデオロギーだけではなく、衛生観念や生活習慣に及んでくると、なかなか綺麗事だけでは済まないなと日々、痛切に思います。(中略)でも、私も20年以上住んで、多様性の難しさに疲れながらもその歴史の中で粘り強く作られてきた折り合いの制度と人道主義に助けられて、そこから学んで今やっとココです。そしてココまで来た経験が実感となって、多様性の力を信じることができてもいます。」
この返信にある「多様性の難しさに疲れながらもその歴史の中で粘り強く作られてきた折り合いの制度」という言葉に答えを見出したように感じました。

「折り合う」。辞書には「意見などが対立する場合に、互いに譲り合って解決する」とあります。この場合では、日本に住む外国人に、日本語の習得などの努力を求めつつも、受け入れる日本側も大きく心構えを整えていくということでしょう。

身近にあるきっかけが新たな関係を作っていくこともあります。私のふるさと秋田での話。東成瀬村という小さな村に「スリランカカレー」なる商品があります。これは、地域のダム工事に多くのスリランカ人が働いていて、彼らが宿舎で作っていた母国のカレーが地元で評判となり、ついには商品化され今では名産となったものです。この過程で様々な苦労はあったと思いますが、小さな共生の成果と思いました。

日本全体で共生の機運を高めるために民意を喚起することが何より大事ですが、残念ながら民意は今置き去りにされていると思います。それは、この外国人との共生に関し、一部の保守の方々と、一部のリベラルの方々の強靭な主張だけが表に出ているからでもあり、その間の中間的(折衷的)な考え方が見えなくなっているからだと思います。そして政治も情けない。私自身折り合うことが大事と言いながら、昨年の入管法審議において与野党の修正合意をまとめられなかったことは痛恨の極みです。相違する考え方が対立するときにあっても、お互いが歩み寄って「折り合う」ことを国民に見せなければなりませんでした。

それでも、諦めずに粘り強く共生社会実現の努力は続けたいと思います。私は奇遇な形で法務委員会に所属し、入管法と向き合い、そして共生社会を考えることになりました。これからも、理想論を振りかざすだけでなく、地道に実践する社会の見本となる国会にするべく努力を続けて参ります。そして多くの国民がこれから出会う奇遇な共生をきっかけに、戸惑いや苦労を感じながらも、折り合いをつけ、経験を積み、多様性の強みを実感できるしなやかな日本になっていくことを心から希望しています。一緒に歩みを進めていきましょう!

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