閉会中に行われた災害対策特別委員会で質疑に立ちました。
与えられた時間は20分。
激甚災害指定に関しては多くの議員が同様の質疑をしていたので、私は被災した生活者への支援に絞って質問を行いました。
被災者の支援には、支援金(義援金)や住宅の応急支援、税や公共料金の減免、融資などがありますが、それらの支援を受けるには、まずは(被害の状況を踏まえた)罹災証明書を自治体から発行してもらわなければなりません。
その罹災証明書、秋田市では被災から24日経った先日、ようやく発行が始まりました。
そもそも、秋田市の浸水被害調査は、調査対象が約2万軒。
そのうち、既に被害がないと認定できたのは約1万軒。
被害が確実にあると認定できたのは約4600軒。
被害が未確定なのは約5400軒。
被害が認定できた内の床上浸水の約3000軒は、これから詳細な二次調査を進めるのに約2か月かかると秋田市は公表しています。
さらには、申請があっても未対応なお宅を含む、被害が未確定の約5400軒の調査も必要になります。
これでは、被災してから3か月以上経たないと支援が受けられない方も出てくることになります。
支援金や住宅の応急支援など、1日でも早い支援が求められるものが、被災後数ヶ月経ってから行われるのでは全くもって機能不全です。
このようなことが起きる大きな原因の一つに、国が定めた細かすぎる指針・運用が挙げられ、それらの改善を強く質疑で求めました。
一つめは、申請の要否です。
罹災証明書の発行を受けるには「被災者による申請」を必要とする運用になっています。
そもそも住宅浸水の被災者は、家が泥まみれになり、途方に暮れるなか、何とか泥をかき出し、ダメになった家財道具を家の外に運び出すなど、目の前のことで精一杯です。
当然ながら、市町村へ申請する余裕は、時間的にも、物理的にも、精神的にありません。
それにも関わらず、市役所に(罹災証明書の発行を求める)申請することを被災者に求めるのは、あまりにも現状を無視した制度です。
現状、災害対策基本法では、申請があったときは罹災証明書を発行することを定めていますが、今回の秋田市のような大規模な浸水被害があったら、浸水エリアを分かっている市役所が、申請を待たずして能動的に調査をし、例え申請がなくても罹災証明書を迅速に交付する仕組みが必要だと考え、法的な整理を確認しました。
政府からの答弁で「罹災証明書を申請によらず交付することを禁ずる法律上の規定はない」ことを確認できたので、首長の判断如何で、より被災者の立場に立った罹災証明書の発行は可能になると思います(それは秋田市でも)。
二つめは、申請方法の統一です。
罹災証明書はフォーマットを全国で統一するよう国から通知が出ています。
しかし、その罹災証明書の発行を求める申請書や申請方法は統一されていないのが現状です。
そのため、自治体によっては必要以上に多くの記入を求めたり、写真や図面の添付、町内会長の証明を求める市町村まであります(山口市)。
一方で、名前や住所のみという非常に簡便な様式の自治体もあります(海南市)。
秋田市も山口市ほどではありませんが、必要最小限にとどめているとはいえず、改善の余地はあると思います。
いずれ、被災直後の被災者の負担を軽減するためにも、必要最小限の記入で済む全国統一フォーマットを使うように国から通知を出すことを求めました。
政府からの答弁は「自治体の意見も踏まえ、対応を検討していきたい」とのことでしたが、明日にでも災害が起きて被害が出る可能性があることから、自治体の意見を聞くまでもなく、一番簡便な書式・方法に迅速に統一してほしいと引き続き内閣府には求めていきます。
そして、一番大事なことが、三つめの被害調査基準の柔軟化です。
現在の基準では、河川氾濫とか土砂崩れのような外からの圧力があった場合には、(家に入らず)外から浸水深の確認だけで調査を完了することができます。
しかし、内水氾濫のようにじわっと上がってきた浸水に関しては、家の中に入って事細かく調査しなければ被害認定ができません。
調査自体にも時間がかかるだけでなく、在宅の時間調整も必要なことから一軒の調査完了まで相当の時間と労力が必要となります。
これらのことが秋田市で罹災証明書の交付に時間がかかる要因の一つになっています。
浸水被害の場合、5センチ床上浸水しようとも、1メートル浸水しようとも、基本的に内側の壁は壊さなければならないし、内側の断熱材は全部取り替えなければならないと言います。
被災者の救済の観点から、必要以上に細かい被害認定に固執せず、迅速に罹災証明書を交付するために、より簡便な判断が可能となる政治判断を求めました。
防災大臣からは「今回なぜ交付がより迅速にできていないかということを国の方でもしっかり検証する必要がある」との答弁がありましたが、今後の検証を待つまでもなく、いま正に被災者の立場にある方々の迅速な救済のための判断こそが必要です。
災害が起きた際に、細かく正確に被害の実態を理解して、把握すること自体は必要な部分はあると思いますが、そこに軸足を置いている限り、被災者の立場に立ってみれば、差し伸べられるべき救済を受ける時期が遅れていくことになります。
被災された皆さまが一日も早く日常を取り戻せるよう、防災大臣にも被災者の切実な実情や声を届け、国や自治体の制度・運用が被災者のためのものに改善されるよう、今後も引き続き取り組んでまいります。
ちなみに、谷防災大臣は「罹災証明書の交付が遅れているという話は聞いたことがない」との答弁をしていました。
信じがたい答弁だと強く抗議しました。
国は被災地で苦しい生活を強いられている方々への想像力が著しく欠けています。
今もなお、変わり果てた家の中で、エアコンもなく、鼻をつく異臭に耐えながら暮らす方々の現状を国には伝え続け、少しでもお役に立てるよう努力を続けていきます。
質疑の様子はこちらから「寺田学」に進むとご覧いただけます。
衆議院インターネット審議中継
議事録はこちらからご覧いただけます。
令和05年08月08日災害対策第8号06_寺田学委員