202410月18日

【政治の仕事とは】

国が定める制度やその運用は、なかなか変えられるものではありません。
しかし、なかには明らかに現場に則していないものもあります。その一つが大雨災害が起きた時の浸水被害調査の方法でした。

昨年7月の記録的な大雨で、秋田市は広い地域で道路や家屋が浸水しました。
被災した皆様から寄せられた声は「早く罹災証明書を出して」というもの。
その悲痛な声を背負って質疑したところ、今年5月に浸水被害調査の方法が変更され、より迅速に罹災証明書が出せるようになりました。

昨年8月の閉会中に行われた災害対策特別委員会。私に与えられた時間は20分でした。
激甚災害指定に関しては多くの議員が同様の質疑をしていたので、私は被災した生活者への支援に絞って質問を行いました。

被災者の支援には、支援金(義援金)や住宅の応急修理、税や公共料金の減免、融資などがありますが、それらの支援を受けるには、まずは(被害の状況を踏まえた)罹災証明書を自治体から発行してもらわなければなりません。
その罹災証明書は秋田市では被災から24日経って、ようやく発行が始まりました。

当時、秋田市の浸水被害調査は、調査対象が約2万軒。
そのうち、既に被害がないと認定できたのは約1万軒。
被害が確実にあると認定できたのは約4600軒。
被害が未確定なのは約5400軒。

被害が認定できた内の床上浸水の約3000軒は、詳細な二次調査を進めるのに約2か月かかると秋田市は公表しました。
さらには、申請があっても未対応なお宅を含む、被害が未確定の約5400軒の調査も必要でした。
それでは、被災してから3か月以上経たないと支援が受けられない方も出てくることになります。
支援金や住宅の応急修理など、1日でも早い支援が求められるものが、被災後数ヶ月経ってから行われるのでは全くもって機能不全です。
このようなことが起きる大きな原因の一つに、国が定めた細かすぎる指針・運用が挙げられ、それらの改善を強く質疑で求めました。

最も支障となっていたのが、詳細すぎる被害調査基準。
現在の基準では、河川氾濫とか土砂崩れのような外からの圧力があった場合には、(家に入らず)外から浸水深の確認だけで調査を完了することができます。
しかし、内水氾濫のようにじわっと上がってきた浸水に関しては、当時は、一軒一軒家の中に入って事細かく調査しなければ被害認定ができませんでした。

床がどの範囲でどのくらいの損傷したか全ての部屋を回る必要があり、流された物が壁にぶつかった際の損傷など調査する必要がありました。
調査自体にも時間がかかるだけでなく、在宅の時間調整も必要なことから一軒の調査完了まで相当の時間と労力が必要となります。
これらのことが秋田市で罹災証明書の交付に時間がかかる大きな要因となっていました。

浸水被害の場合、5センチ床上浸水しようとも、1メートル浸水しようとも、基本的に内側の壁は壊さなければならないし、内側の断熱材は全部取り替えなければならないと言います。
被災者の救済の観点から、必要以上に細かい被害認定に固執せず、迅速に罹災証明書を交付するために、より簡便な判断が可能となる政治判断を求めました。

防災大臣からは「今回なぜ交付がより迅速にできていないかということを国の方でもしっかり検証する必要がある」と悠長な答弁でしたが、質疑後も内閣府の防災担当者とやりとりを続け、内水氾濫の場合も家屋の外から分かる浸水深から家の中の被害状況を推定して被害認定できる方法に変更されました。
調査方法が変わった5月以降も全国で深刻な大雨被害がありましたが、以前より迅速に罹災証明書が出せるようになったとのことです。

ちなみに、谷公一防災大臣(当時)は「罹災証明書の交付が遅れているという話は聞いたことがない」との答弁をしていました。
信じがたい答弁だと強く抗議しました。
国は被災地で苦しい生活を強いられている方々への想像力が著しく欠けています。

近年は、過去になかったような大雨が頻発しています。水害は誰にいつ降りかかるかわからず、そして、一度起これば短期中期、時にはこれまでの生活を永遠に変えてしまうほど甚大な影響を与えます。
国が定める制度やその運用を変えることは一朝一夕にはできませんが、現場の声を国に伝え続け、少しでも役に立てるよう努力を続けていきたいと思います。

当時の質疑の様子はこちらから「寺田学」に進むとご覧いただけます。
衆議院インターネット審議中継

議事録はこちらからご覧いただけます。
令和05年08月08日災害対策第8号06_寺田学委員

写真は、被災現場で浸水した畳の回収や廃棄作業などボランティアに参加したときの様子。

 

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