202410月10日

【政治不信に決着を】


悔しさが溢れる国会だった。それは、国会に向けられた政治不信に対して、国会自らがそれを払拭することができなかったからだ。
 
自民党の裏金問題。
 
これほど国民を深く裏切ったものはないのではないか。組織的、継続的に派閥のカネを懐に入れ、法律で義務付けられた報告書への記載を怠り、裏金を作っていた。その額約6億円近く。これはあくまで報告があった5年間に限ったもので、実態はもっと膨大な額に上っているはずだ。そして、その裏金を作っていたとされるのは、自民党の国会議員100人弱。実に4人に1人以上が裏金を作っていた根深い問題であった。
 
それらの裏金には、本来、雑所得として課税されるべきものも含まれていただろう。普通に暮らす国民であれば税務署の監視の目が光る一方、約6億円の裏金については、誰一人として、たった一円も納税されることはなかった。
 
せめて、本当にせめて裏金疑惑をかけられた議員には誠心誠意説明を尽くして欲しい。それが完全に失墜した政治の信頼を取り戻すための最低限の責務であると信じていた。
 
私は、疑惑を持たれた議員が弁明を行う国会の機関、政治倫理審査会(政倫審)の責任者であり、取り扱いを任されていた。その際、私は野党議員であるが、これは与野党の対立ではないと肝に銘じていた。党派は違っても同じ国会議員として、失った国民からの信頼を少しでも取り戻すため、国会を挙げて行動すべきと考えていた。
 
しかし、それは綺麗事だったのかもしれない。どれほど裏金議員に説明責任の大切さを説いたところで彼らは無反応であった。ほとんどの議員から「説明する必要はない」と書面で回答を受けた。世論から押され、観念した派閥の元幹部からは、「テレビカメラは入れないでほしい」「記者たちの同席は認めないでほしい」等々、往生際が悪い様々な注文がついた。
大変な騒動の後、ようやく数名の議員が政倫審で弁明したのだが、何を聞かれても「覚えていない」「事務局長に任せていた」「秘書が行ったこと」と逃げ続け、説明責任は微塵も果たされることなく終わった。本当に情けなかった。
 
自民党が裏金議員に下した処分も大甘だった。裏金議員の中で、処分を受けた者は38名だが、そのうち16名は単なる注意だけ。残りの半数以上は注意すらされなかった。処分の線引きは額の大小を基準としたようだが、いくらであっても故意に政治資金を隠し、脱税の疑いを受けているのであれば、処分されるべきであろう。しかし、そのような常識は遂に通じることもなく「処分は済んだ」と、この問題の幕は自民党によって閉じられた。
 
検察が起訴したのも4千万円以上の裏金を作っていた3名の議員だけであって、その刑事責任の多くは秘書や派閥の事務総長が負うこととなった。
 
私は青かったのかもしれない。国会に向けられた政治不信に対しては、国会自らがそれを払拭するべきであり、国民からの信頼なくして政治は進まない。そう当たり前のように考えていた私自身の政治姿勢は脆くも打ち砕かれた。そして今更ながら悟った。
 
その決定的証左が、今回の突然の選挙だ。総裁選の間は「主権者である国民が(選挙において)判断できる材料をきちんと示すのは、新政権の責任だ。材料もないのに判断してくれ、という話にはならない」と正論を述べていた石破氏は、総裁の座につくや否や前言を撤回し、予算委員会を開催することもなく解散総選挙を判断した。思いっきりブレた。前言撤回の理由は「新総裁が誕生したご祝儀相場のうちに選挙をしたら勝てる」。そのような打算に基づく判断だった。
 
なぜこうも、好き勝手できるのか。全ては、権力を預かるものとしての驕りであり、主権者たる国民へのみくびりだろう。説明をしないのも、処分を甘くするのも、そして、党利党略で解散総選挙を行うことも、国民の眼を誤魔化すことができるだろうという、自民党の驕りであり、国民へのみくびりである。
 
「国民は時間が経てば忘れますよ。選挙はその後に」。これは安保法制を議論している最中に政府幹部から聞いた言葉である。実際に、自民党はそうやっていつも選挙で勝ってきた。この5年で13名もの自民党議員が逮捕・起訴されている。それでも選挙で自民党は勝ってきた。どんなことが起きようとも自民党が選挙で勝利を収めてきたことが、この驕りを生んだのだ。
 
今回も、やり方は同じだ。新総理誕生のご祝儀相場の最中に解散をすれば、裏金問題への関心は薄れる。それで選挙に勝てる。選挙に勝ったら「裏金問題のみそぎは済んだ」と胸を張れる。
 
もうたくさんだ。国民の信頼を踏みにじる、そのような結果を絶対に招きたくはない。今回も勝たせてしまえば、彼らはまた同じことを繰り返すだろう。どんな不祥事を犯しても、嵐が過ぎ去るまで隠れ続け、支持率が下がれば総理を変えて国民の視線がそれた時を狙って選挙をやって、信任を得たと胸を張る。その信任とは、裏金事件を真摯に反省し、厳しい処分を下し、正面から説明責任を果たした姿で信任を得たのではない。説明から逃れ、処分をろくに行わず、国民の関心をそらすための強引な解散総選挙が功を奏して議席を守った結果でしかないのに。
 
この間、皆さんからたくさんの怒りの声を聞いてきた。「こっちはどんな思いをして税金を納めていると思っているんだ」「国民にはインボイスで一円単位まで報告させておいて、自分たちはいくら裏金を作ってもおとがめなしか」「全部秘書がやりましたって、自分たちをバカにしているのか」。
 
本当にその通り。その皆さんの怒りを背負い国会で自民党と向き合ったものの、我々野党だけでは、自民党の驕りを正すことは出来なかった。本当に情けなく、悔しい想いでいっぱいだ。
 
この選挙で、政治不信に決着をつけ、国民の信頼がなければ担うことが叶わぬまっとうな政治を取り戻したい。疑惑を持たれれば説明を尽くし、受けるべき処分を受け、それらが不十分であれば選挙で厳しい判断を受ける。そのような国民の信頼なくして政治は成り立たないという、当然の在り方を取り戻したい。裏金問題、政治不信に決着をつけ、大きく政治を前に進めたい。
 
今回の選挙は、自民党の信任を問う選挙だ。
 
本当に自民党は変わったのか。
本当に自民党は責任をとったのか。
それが問われている。
 
いまの政治を変えたい。
そして大きく前進したい。
 
皆さん、お力を貸してください。この信頼を失った政治を変えるために。課題が山積する秋田と日本の未来を作る、信頼される強い政治を作るために。

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