202404月26日

【立法者の意思を明らかに】

今国会では、私の所属する法務委員会をはじめとして、離婚後の共同親権を導入する民法改正案の議論が行われています。

共同親権の問題には推進派・慎重派の双方から多岐にわたる意見がありますが、私は同意のない共同親権を認めることに極めて慎重な立場で審議に臨みました。
政府から提案された改正案は双方に配慮した玉虫色の規定に止まっていることから、国会の議論を通じて立法者の意思をを明らかにすべく質疑を重ねた結果、以下の答弁が示されたので、この法案の正しい理解が進む一助となるよう共有いたします。

法案の審議は衆議院から参議院に移りましたが、参議院でも活発な議論がなされることを期待します。


◎これまでの主な委員会答弁

●共同親権と単独親権のどちらが原則か
子供の利益のためにつくられる制度でございます。何が原則ということを定めているものではありません。(4/5大臣・おおつき)

父母双方を親権者とするか、その一方とするかについては、個別具体的な事情によって判断されるものでございますので、どちらが認められやすいということは一概には言えない。(4/5局長・寺田)

●単独親権の判断
身体的なDVがある場合だけでなく、精神的DV、経済的DVがある場合や、父母が互いに話し合うことができない状態となり親権の共同行使が困難な場合も、事案によりましてはこの要件に当てはまることがあると考えられます。(4/2局長・大口)

例えば、父母間での協議ができない理由などから父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるような場合には、その一方を親権者と指定することとなると考えられます。(4/2局長・枝野)

モラルハラスメントについても、いわゆる精神的DVに当たる場合がある。(4/2大臣・本村)
精神的暴力の場合に、医師の診断書が必須であるとは考えておりません。(4/2大臣・本村)

何年もケアしていない、養育費も払っていない、コミュニケーションも取っていない。だけれども、共同親権になった途端に介入をしてくる、あるいは妨害的なことをしてくるということになれば、それはそもそも共同親権者としてふさわしくない、あるいは共同親権を行使するにふさわしくないという判断が十分裁判所において成り立ちます。(4/5大臣・山井)

単独親権になる場合、父母のどちらか一方を親権者とする場合と比べますと、父と母双方を親権者とすることを考える場合の方が、父と母との関係は重要視されるかと思います。(4/5局長・寺田)

父母同士のけんかによって、子の心身の健全な発達を害するような場合には、子の利益を損ねるという意味で、単独親権になる場合があると考えられます。(4/5局長・寺田)

父母がいずれも単独親権とすることを強く主張する事案においては、その背景に、配偶者間の感情的な問題に基づいて親権の共同行使が困難な事情があるのではないかとも考えられます。本改正案によれば、このように配偶者間の感情的問題に基づいて親権の共同行使が困難な場合には、事案によっては裁判所は必ず単独親権としなければならないことがあり得ると考えられます。(4/5局長・米山)

父母が共同して親権を行うことが困難であるかどうかについては、これは離婚後の話でございますので、そういう意味では、委員御指摘のとおり将来ということになります。(4/9局長・寺田)

父母が共同して親権を行うことが困難であるとは認められないときであっても、単独親権を判断することはあり得ますよね。
→819条7項1号、2号は、それぞれあくまで例示でございますので、委員の御指摘のとおりかと思います。(4/9局長・寺田)

子供の利益のためにということについて、幾ばくかの理解が双方に成り立つならば、共同して親権を行使するための最低限のやり取り、最低限のコミュニケーション、感情はもう激しく葛藤しているんですけれども、でも、子供のためにという切替えができる親がいらっしゃるならば、その何がしかの部分でコミュニケーションが成り立つ可能性を最初から切って捨てるということは適当ではない。
そのコミュニケーションは、子供のその親権の行使に関わるコミュニケーション(何かをちゃんと決めていく)が取れる状態。(4/9大臣・寺田)

子連れで別居することに関して、理由があって別居していることに関して、略取誘拐だというふうに一方の親を罵る、まあ、罵っていない、指摘でもいいですよ、相手を犯罪者、犯罪を犯している人だ、あなたのやっていることは犯罪行為だというふうに一方的に言い、それをまた対外的に、ソーシャルメディアでも結構ですし、友人に対してでもそうですけれども、相手に対してその理由自体の存否を確認するまでもなく、及び、確認したとしても一方的に相手に略取誘拐なのだというふうに言っているような方は、私は、今、前段で一般論とお話しいただいた人格尊重義務を損ねているか。
→その通りだと思う。(4/9大臣・寺田)

DVの事実やそのおそれがないことのみをもって裁判所が必ず父母双方を親権者と定めるというわけではありません。(4/9局長・寺田)

養育費の支払い実績があるという事実のみをもって裁判所が必ず父母双方を親権者と定めるというわけではありません。(4/9局長・寺田)

●「おそれ」
おそれの認定につきましては、過去にDVや虐待があったことを裏づけるような客観的な証拠の有無に限らず、諸般の状況を考慮して判断することとなり、いずれにせよ、裁判所が必ず単独親権としなければならないケースは、DVや虐待がある場合には限られません。(4/2局長・大口)

●変更の申し立て判断
DVや虐待の場合のほか、父母が共同して親権を行うことが困難である場合には、親権者を父母双方に変更することはできないことになります。(4/2大臣・大口)

単独親権を共同親権に変更するというような場合には、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮した結果、親権者を父母の双方に変更することが子の利益のために必要であると認められることが必要となり、また、DVや虐待のほか、父母が共同して親権を行うことが困難である場合は、親権者を父母の双方に変更することはできないこととなります。(4/5局長・寺田)

表面上の形の上での合意があったとしましても、その背景にある事情、そのお二人の置かれている状況を裁判所が見て、その合意がどういう形で、本当に真なる合意なのか、そういったことについても視野に入れた審判が行われることになります。(4/9大臣・本村)

●養育費支払実績の評価
親権者変更の判断においては、親権者変更を求める当該父母が養育費の支払いのような子の養育に関する責任をこれまで十分果たしてきたかも重要な考慮要素の一つであると考えられます。(4/2大臣・大口)

別居親が本来であれば支払うべき養育費の支払いを長期間にわたって合理的な理由もなく怠っていたという事情は、親権者変更が認められない方向に大きく働く事情であると考えられます。(4/2大臣・大口)

●急迫の事情
入学試験の結果発表後の入学手続のように、一定の期限までに親権を行うことが必須であるような場合、DVや虐待からの避難が必要である場合、緊急の医療行為を受けるため医療機関との間で診療契約を締結する必要がある場合などがあります。(4/2局長・大口)

緊急の医療行為、手術等を受けるため医療機関との間で診療契約を締結する必要がある場合などはこれに該当すると考えられます。(4/2局長・枝野)

モラルハラスメント等もこれに当たる場合がある。(4/2大臣・本村)

過去の事象についても、当然、検討ないし視野に入れて判断が行われる。(4/2大臣・本村)

暴力等の直後でなくても、急迫の事情があると認められる。
DV等からの避難が必要な場合に、子を連れて別居することに支障を生じさせるものではない。(4/5局長・鎌田)

子の心身に重大な影響を与え得る治療でも、緊急を要するものにつきましては急迫の事情があると認められる(4/5局長・鎌田)

中絶手術につきましても、母体保護法によってこれが可能な期間が制限されていることなどを踏まえれば、急迫の事情に該当し得ると考えられます。(4/5局長・寺田)

(子連れ別居における)特段の理由なくというのは、例えばDVからの避難などの急迫の事情があるわけではないのにという意味で用いたものでございます。(4/9局長・寺田)

急迫の事情に該当する例としましては、これまで国会の審議の中で、入学手続のように一定の期限に親権を行うことが必要な場合や、DVや虐待からの避難が必要であるような場合、緊急の医療行為を受けることが必要な場合があることを説明してきたところでありますけれども、いずれも例示であり、急迫の事情が認められる場合はこれらに限定されるものではございません。(4/9政務官・道下)

●監護及び教育に関する日常の行為(単独行使)
その日の子の食事といった身の回りの世話や、子の習い事の選択、子の心身に重大な影響を与えないような治療やワクチン接種、高校生が放課後にアルバイトをするような場合などがこれに該当すると考えられます。(4/2局長・枝野)

医療機関との間の医療契約の締結につきましては、子の身の回りの事項として、身上監護に当たるものと解されます。(4/2局長・枝野)

子供が日常的に使用する薬で、その心身に重大な影響を与えないようなものの選択については、監護又は教育に関する日常の行為に当たり、同居親が単独で決定することができる。(4/2大臣・本村)

通常のワクチン接種であれば、監護又は教育に関する日常の行為として単独で行うことができると考えております。(4/5局長・寺田)

未成年者に係る届出につきましては、転入転出などの事実や、現に届出を行っている者の代理権等を確認し、転入転出等の処理を行っておりまして、共同親権者である父母双方の同意は求めておりません。
今回の民法改正後における転入転出等の届出につきましても、現行の共同親権である婚姻中における取扱いと同様と考えておりまして、基本的には現行の事務の取扱いを変更することは想定していない。(4/9総務審議官・道下)

●相手方保護
現行民法の第825条によりまして、父母が共同して親権を行う場合において、その一方が共同の名義で子に代わって法律行為等をしたときは、取引の相手方が悪意でない限り、その行為が他の親権者の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。(4/2局長・枝野)

●人格尊重義務・協力義務
暴力、暴言、濫訴等は、この義務違反と評価される場合があると考えております。(4/2大臣・道下)

DVや虐待等はこれらの義務違反と評価され得ると考えております。(4/2大臣・本村)

離婚後の父母双方が親権者となった場合におきましても、別居の親権者が同居親による養育に対して嫌がらせのような不当な干渉をすることを許容するものではございません。(4/5局長・おおつき)

●濫訴
自己の主張が事実的、法律的根拠を欠くものであることを知りながら、あえて訴えを提起した場合など、訴えの提起が裁判制度の趣旨、目的に照らして著しく相当性を欠くときは、例外的に訴えの提起が不法行為に該当し得る。(4/2局長・道下)

●フレンドリーペアレントルール
フレンドリーペアレントルールは、これは様々な意味で用いられているため、一義的にお答えすることは困難でありますけれども、御指摘の規定、これは、子の養育に当たっては、父母が互いに人格を尊重し、協力して行うことが子の利益の観点から望ましいと考えられることから、父母相互の人格尊重義務や協力義務を定めたものであり、DVや虐待の主張をちゅうちょさせるものではないと認識しております。(4/2大臣・道下)

父母の一方が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき、とは父母と子との関係に着目したものでありまして、父母相互間の関係を直接規定するものではありません。(4/9局長・寺田)

●子の意見
家庭裁判所が離婚後の親権者の指定又は変更の裁判をするに当たり、父母と子との関係その他一切の事情を考慮しなければならないこととしております。これは、子が意見を表明した場合には、その意見を適切な形で考慮することを含むものであります。(4/2局長・大口)

子供の人格の尊重の中には、子の意見、意向を適切な形で考慮する、尊重する、そういう意味は間違いなく含まれています。(4/5大臣・山井)

例えば親権者を変更するような手続の場合、子供の人格尊重権というのがありますので、子供がこちらの親を親権者にしたいという強い声があれば当然それは聞き入れられることになるというふうな形で、この趣旨がしっかりと生かされていけば、多くの子供の意見を徴することが可能になると思います。(4/9大臣・本村)

●親権と親子交流
母の離婚後の子と別居親との親子交流は、親権の行使として行われるものではなく、別居親の親権の有無の問題と親子交流の頻度や方法をどのように定めるかといった問題は別の問題として捉える必要がございます。(4/2局長・大口)

離婚後の親権者、これをどのように定めるかという問題と親子交流の頻度や方法をどのように定めるかという問題は、別のものとして基本的には捉える必要があると思います。(4/9大臣・道下)

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