東日本大震災時の原発事故について描かれた映画。当時の官邸内部にいた菅直人総理、枝野官房長官、福山官房副長官、そして総理補佐官だった私が実名で登場する。7月から一般公開されるとのこと。
以下、関係者先行試写会で観た感想を率直に。
当時の官邸の原発対応に関しては、映画のみならず書籍等色々世に出ているが、いずも誰の視点で描かれているかは、情報の取り扱い方で見えてくるものだ。
本作は、完全に「官邸」側にたった作品で、特に福山副長官や当時の某審議官の視点と記憶に基づいているように感じた。
フィクションと銘打ちながら、私自身の記憶と照らし合わせても、当時の記憶と符合することが多い。ただ、その表現の仕方はかなり官邸側を持ち上げているように感じた。特に、福山副長官を。ものすごく、カッコイイのだ。
反面、私はヘナチョコ弱虫キャラとして描かれており、見ていて恥ずかしかった。。。。中でも、総理が東電に乗り込むことを決断したシーンの私は情けない。当時、実際に私は「総理が民間企業に乗り込み、東電に指示を出すのであれば法的な根拠を整理しておく必要がある」と枝野長官に進言した。枝野長官からは「そんなこと考えている場合じゃない!」と激昂されたのだが、それでも食い下がり法的な整理の必要性を説いた。長官に相手にされなかったので事務の瀧野副長官と総理秘書官に整理を依頼した。結局その整理は役に立ち、その後の総理発言等で多数引用される。しかし、劇中では、私は「総理が東電に乗り込むって法律的にどうするんですか〜」と泣き言を言うシーンとなっている。無念。
私がヘナチョコキャラになるのは別に構わないが、他人のことで一点だけ看過できないシーンがあった。
それは、佐伯という別名で登場する伊藤危機管理監について。
危機管理監とは震災やテロ等の大惨事が起きた際の、まさしく危機管理に関わる官僚機構トップである。伊藤危機管理監は、元警視総監という経歴を活かし、様々な局面を冷静沈着に判断し的確な指示をだしてきた。その伊藤危機管理監が、なんと東電の撤退を容認するかのようなシーンがあった。総理に「視野にいれるべき」と進言をする一幕が描かれていた。
それは、全くの事実無根である。むしろ伊藤危機管理監こそ、弱気になる政治家たちを横目に「東電の撤退なんて絶対に許されない」と気丈に振舞っていた。東電から官邸に派遣されている幹部にも強い口調で反論していたのを記憶している。
その伊藤危機管理監が東電の撤退を促すかのような立場で登場するのは事実とは違う。そのことを、伊藤危機管理監の名誉のためにここに記しておきたい。
(当時の私の記憶は、こちらにて)
https://www.manabu.jp/blog-entry/2016/03/11/433/
いずれにせよ、当時の緊迫する雰囲気は痛いほど伝わる映画ではある。5年経って、あの時の恐怖感が薄れてきているこの時期に、しっかりと思い出すには適した映画だ。
ご興味ある方はご覧になってください。